ビワマスを求めて

今年も気づけばもう11月。生き物たちは厳しい冬に向けて準備をはじめます。

そんな秋に水中の世界で見られるのは、アユやサケなどの産卵です。最近、足繁く通う琵琶湖では、コアユの大産卵が有名です。アユたちは大群となって泳ぎ、川が黒く見えるほどに高密度になる場所もあります。
琵琶湖のアイドル的存在のアユですが、これに負けないくらいの魅力を持つ魚がいます。それが今回の主役、ビワマスです。名前に「ビワ」とついていることからわかる通り、琵琶湖にのみ生息するこの魚は、全長50〜60cmほどで、川で孵化したあと湖に降り、2〜5年成長したのち、生まれた川に戻り産卵すると言われています。

このビワマスはずっと撮影したかった憧れの魚で、今年こそはカメラにおさめたいと思っているました。
11月上旬、早朝から張り切って琵琶湖に向かいました。別名アメノウオと呼ばれるビワマスは、大雨が降った後に群れをなして遡上すると言われていますが、今年は雨が少なくどこも数が少ないと聞いていたので不安もありました。

ドキドキしながら目星をつけていた川を覗いてみると……
いました!ビワマスです!体の中央を走る薄ピンク色の模様が鮮やかで、口は湾曲して鋭く尖っています。よく見るとこのマスがいるところだけ砂が掘り返され、周辺よりも白くなっています。おそらく、メスが掘った産卵床をこのオスは守っているのでしょう。
大迫力のビワマスを目の前にして、居ても立っても居られなくなった私はすぐに準備をすませて川に飛び込みました。水深10cmにも満たない浅い川に、シュノーケルをつけてへばり付き、彼らに気づかれないように匍匐前進しながら忍び寄ります(この光景は第三者から見ればかなりの変人に見えることでしょう)。そして、近くに寄ってくるのを待って撮影したのがこちら。
こちらを睨むような鋭い目つきのオス。かなりのイケメンです。顔や、エラには他のオスと戦った傷が刻まれています。
少し上流に行くと、左右が背の高い植物で覆われた薄暗い水路があり、そこには多くのビワマスたちがペアになって産卵床を掘っていました。
遠くからこちらを観察するビワマスたち
彼らは運動神経も高く、体長の倍はあるような堰でも軽々登っていきます。

サケ科魚類は警戒心が強く、人の気配を感じるとすぐに隠れるような性格のものが多いですが、今回撮影した川のビワマスは、撮影中に体の下に潜りにきたり、腕に沿うように絡んできたり、ヌルヌルの尾びれで顔をビンタしてきたりと、どこか人懐っこさを感じました。もしかしたら大きなビワマスと勘違いして求愛されていたのかも知れませんね!
残念ながら今回は産卵を撮影することはできませんでしたが、彼らとの素敵な出会いがありました。ビワマスは産卵を終えると死んでしまうわけですが、故郷の川に戻り最後まで命を繋ごうとする姿は何度見ても心を打たれます。美しく、儚い命の物語です。

今回は動画も沢山撮影し、迫力のあるビワマスが撮れたのでYouTubeの方もお楽しみに!

- UNKNOWN -

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